~LARPを遊んでみたい!と言う遠く小さな声に応えて~
ここしばらく静観していたところ、あちこちからちらほらと、LARPを遊んでみたい!という声を聞くようになりました。
ですが、その声は、注意深く見てみると、(やってみたいけど)地元ではやっていないし・・・という、少し寂しいものが大半です。
そこで、今回は「体験型LARP普及団体CLOSS」さんから発行されている『LARPゲームサークル運営ガイドブック』のご紹介をしたいと思います。
『LARPゲームサークル運営ガイドブック』について
こちらの本は、著者である雛咲悠さんが、カクヨムで書き記していたものを加筆修正したものになります。
2015年に発行された当時は、まだ「体験型LARP普及団体CLOSS」が立ち上がっていなかったこともあり、ご自身がスタッフとして活動している「埼玉県入間市LARPサークル レイムーンLARP」を実例に取り上げ、丁寧にその運営方法を教えてくれています。
早速中を見ていきましょう。
なぜ書籍にしたの?
カクヨムに書き記していたものを、なぜわざわざ書籍にしたのか、また、そもそもなぜ運営方法などを書き記していたのか、雛咲さんは「はじめに」と言うタイトルで語ります。
同著者の別の書籍、『LARPのススメ』にも書かれていることですが、雛咲さんは一貫して、「日本でも、LARPを行う機会がたくさん増えること」を願っています。
そして、願うだけではなく、具体例を出しながら、「もし、あなたがサークルを立ち上げようとするのなら」こうすると良いよ、と、話しかけようとしています。
それは、最初のページにある「出来るだけ詳しく丁寧に、をモットーに書いていきますが、何か分からないことがございましたら(中略)お気軽にお問い合せください。」からも伝わってきます。
書籍化したのも、読者さんからの「本にしてほしい」と言う声に応えたからでした。
最初から「ほんの少しでも、あなたが1歩を踏み出すのなら」手伝うよ、と言ってくれているのが判りますよね。
実際に立ち上げるまでの準備も入念に
まず世界観から
LARPゲームを行うにあたり、必要なものはたくさんあります。
以前、LARP(Live Action Role Playing)は「ごっこ遊び」だとお伝えしました。
まず、あなたが遊んだことのある、「ごっこ遊び」を思い出してください。
ルールや世界観、と言うと堅苦しく聞こえますが、例えば「鬼ごっこ」にも遊ぶ全員が共通認識を持てるルールが明確にありましたし、そこには世界観もありましたよね?
雛咲さんは、最初に世界観を定めることをおススメしています。
これは非常に理に適っていて、世界観が決まらなければ、付随した小道具や衣装など、LARPと聞いてぱっと思いつくアイテムの数々も準備できませんし、ルールも定められません。
その世界に魔法はあるのかないのか、それだけでもルールが変わってくるからです。
そして、LARPの世界観は無数にあることも、同時に教えてくれています。
最低限必要なスタッフを考えよう
どれくらいの規模で遊びたいのか、それによって必要なスタッフの人数が変わってくる、と雛咲さんは語ります。
ただし、こちらに書かれていることは、シナリオ型LARP(物語の大筋はあらかじめスタッフが準備しますが、参加プレイヤーはその内容を知らされていないため、プレイヤーの言動が物語にダイレクトに影響を与えるもの)に特化されている感があります。
そのため、もし「あなたが遊びたい、あるいは作りたいLARP」が、演技戦闘(いわゆるチャンバラごっこ)に特化しているものであるならば、多少違ってくるでしょう。
とは言え、まったく何も知らずにサークルを立ち上げることを考えるならば、十分参考になるはずです。
どこで遊ぶ?
次に、遊び場の目途をつけることを取り上げています。
これは、公共施設の1室だったり、あるいはサバイバルゲーム・フィールドかも知れません。
ここでは、主に公共施設を使うことを前提に、どういった施設がどのような理由から借りやすいのか、また、想定しうるその場所のメリット・デメリットを詳しく教えてくれています。
お金の話
これはサークルを運営において、非常に重要なことですから、ないがしろにできません。
ですが、少々生々しくて、ちょっと気軽にお伺いするには気が引けてしまいますよね。
雛咲さんは聞かれる前に、堂々とご自身の所属サークル、レイムーンLARPを例に挙げ、具体的な金額と、その割り出し方を教えてくれています。
また、「くれぐれもスタッフのポケットマネーで苦しくならないように」と注意喚起もあります。
最初だけは持ち出しになるものやむなし、ですが、必要なお金はサークルメンバー全員が納得できる明朗会計で集めたいですね。
サークルを守るために
折角立ち上げるサークルです、長く愛して、続けていきたいですよね。
そのために必要不可欠なものとして、「同意書」を取り上げています。
これは、「LARPが完全無欠に安全とは限らない」ことから起因しています。
・・・そう書くと、物々しいでしょうか?
ですが、またここで少し思い出してください。
子供の頃に遊んだ「鬼ごっこ」転んで怪我をしたことはありませんか?あるいは、転んで怪我をした人を見たことは?
LARPの「安全とは限らない」も、それと同じです。
実際に体を動かします、走る場面も出てくるかもしれません。
足がもつれて転ばない、とは限りませんよね?
また、前項で取り上げたお金のこともあります。
そんな、万が一の時どうしよう?をサークル内であらかじめ取り決めておくのが「同意書」の役割です。
ここでは、その「同意書」がいかに大切かを教えてくれています。
ここまできてから、ようやく参加者集め
下準備をしっかりやってから参加者を集めよう、と謳っています。
人集めは、ずばり情報戦です。
せっかくサークルを立ち上げても、一緒に遊んでくれる人が居なければ、機能しません。
どのように情報ツールを使い、あるいはアナログなやり方でも効率的に参加プレイヤーになりうる人たちに知ってもらうか、それを実例を元に紹介しています。
こちらの本では書かれていませんが、最近はお店が増えてきていますから、ゲームカフェにチラシを置かせてもらったり、コスプレイベントなどで宣伝しても良いかもしれません。
そして、目の前にあるもの
次に、章を変え、小道具や衣装について触れています。
まず、どうやって入手するか。
また、実際にサークルが動き出すと、その小道具の多さにビックリするかも知れません。
最初は少なかったとしても、サークルが活発になればなるほど、小道具は増えていきます。
通貨代わりのコインなどの小さいものや、衣装や武器などと言った大きなものまで、少なくしたつもりでも、実に様々な小道具が準備されることでしょう。
これが、レンタルスペースを借りられれば良いのですが、最初はスタッフの誰かの家での保管になるかと思われます。
ここでも、レイムーンLARPを例に取り上げて、実際にどこで入手したのか、また現在どれだけの居住スペースをLARPグッズが占有しているのか、遊ぶときにはどうやって持ち出しているのか、教えてくれています。
スタッフさんのこと
物語と登場人物と打ち合わせ
シナリオ型LARPでは、もちろんシナリオ(物語の大筋)が必要になります。
これを公共施設で遊ぶ場合、施設毎に設定された制限時間がありますから、時間配分に気をつけながらシナリオを作って、実際にテストプレイをしてみよう、とあります。
さらっと書くと、いきなり難しい・・・と思うかも知れませんが、ここでも実際に遊んでいるレイムーンLARPのタイムテーブル詳細が載せられていますし、細かいギミックでどれくらいの時間を取ればいいのかも実体験から割り出した目安が載っています。
そして、LARPにはルールがあります。
これはゲーム進行中、ずっとつきまとうものです。
ですから必然的に、ルールに基づき、公平にその場をさばく人が必要になります。
また、物語には参加プレイヤーだけではなく、物語を彩る登場人物たちも必要になってきます。
それは、突然襲い掛かってくるモンスターかも知れませんし、重要な情報を持っている人物かもしれません。
そういった登場人物たちを演じるのも、スタッフの役割です。
ですが勿論、1人だけでは、シナリオを作り、ゲーム進行中のルールをさばき、すべての登場人物を演じることは不可能です。
そうすると、複数のスタッフが必要になりますから、実際のゲームをする前に打ち合わせが必須になりますね?
その具体的な方法が、ここに書いてあります。
演技戦闘はどうやるの?
演技戦闘について、いわゆるチャンバラごっこ、と記載しましたが、だいたいあっています。
ですが、この「チャンバラごっこ」はたいへん魅力的です!
是非実際に読んでいただきたいので、私は詳しくは書きませんが、2ページ半を使って、いかにチャンバラごっこを全員が安全に楽しむか、また、物語上でも盛り上がる要素の1つになるので、そこをどう魅せるか、生かすかについて、具体例を挙げながら詳しく教えてくれています。
長く遊ぶために
次の章では、長く遊ぶためのコツについて触れています。
具体的なものとしては、例えばサークルメンバーに発行するスタンプカードだったり、世界観の積み重ねだったり、サークル既定を固めることだったり、サークルのPRの仕方だったり、プレイヤー同士の交流の場を作ったり、様々なものを紹介しています。
世界観とサークル既定は最初に決めたはずでは?と思うかもしれません。
確かにそうなのですが、サークルはある意味で生き物です、メンバーが増えれば規定も変える必要が出てきたり、長く遊んでいれば舞台に彩が出来てきて、より世界観が掘り下げられます。
無名だった宿屋に名前が付くことだってありますし、1回目はただの通りすがりの登場人物だった人が、2回目のゲームでは重要な情報を持っている人になることだってあり得るのです!
そして、そういう規定や彩は、スタッフだけではなく、サークルメンバー全員で作っていくことにもなり得ますから、メンバーにもサークルそのもの、またその世界観などに、愛着がわいていくのです。
LARP小話
最後の章は、LARPに関するちょっとした気付き、などが載っています。
LARPとホラーの相性についての考察や、サバイバルゲームとの親和性について書かれていたり、五感を刺激することの重要性、はたまた日本人の特性など。
読んでいて、なるほど、と思うところもありました。
五感の刺激などは、文字情報ながら、書かれている単語1つ1つがイメージしやすく、読んでいてワクワクするほどでした。
野外LARPゲーム、遊んでみたいです!!
最後のページ
最後には、また雛咲さんのご挨拶が書かれています。
「日本でLARPが広まるかどうかは、やはりサークル運営が鍵ではないかと思い」したためた、とあります。
最初の挨拶にもあったように、雛咲さんは「日本でもLARPを広めたい」のです。
冒頭で私は、「あちこちからちらほらと、LARPを遊んでみたい!という声を聞くようになりました。ですが、その声は、注意深く見てみると、(やってみたいけど)地元ではやっていないし・・・という、少し寂しいものが大半です。」と書きました。
この本が書かれた2015年は、確かに茨の道でした。
先人も居ない、手探り状態でした。
ですが、2017年現在、日本のあちこちでLARPゲームサークルおよびイベンターたちが動き出して、あるいは動くべく準備段階にあります!
ここで、簡単ではありますが、執筆時点で私が知る限りのサークルおよびイベンターをご紹介しましましょう。
☆稼働中のイベンター
体験型LARP普及団体CLOSS(全国) 公式HPはこちら
ゆるLARP(千葉県 *演技戦闘特化型 今後開催場所は変わる可能性あり)
クトゥルーライブ(東京都 *秋葉原周辺 活動は年2回程度 2017年も開催予定!)
☆稼働中のサークル
入間市LARPサークル レイムーンLARP(埼玉県 *ファンタジー中心) 公式HPはこちら
ダンデリオンLARP(香川県 *ファンタジー中心 今後他ジャンルも視野にあり) 公式ブログはこちら
☆鋭意準備中のイベンター
ゴーレムLARP(京都府 *スチームパンク×中世ファンタジーを予定 2017年5月を目安に活動開始を考え中!)
イベント制作団体Cabinet of Cabal(佐賀県 *現代クトゥルフ専門 活動は年1回を予定)
☆鋭意準備中のサークル
フォーリテリアLARP(千葉県木更津市 *ファンタジーを予定)
シューティングスターLARP(大阪府 *ファンタジーを予定 本格始動は2017年秋ごろを予定!)
「あなた」がこの流れに続くかどうかは、判りません。
雛咲さんも、読者の皆さまに、さぁこれを読んだのだから是非サークルを立ち上げましょう!とは一言も言っていません。
「少しでもLARPサークルを立ち上げるささやかなきっかけになって頂ければ」と、謙虚におっしゃっています。
それでも、もし、「あなた」がサークルを立ち上げたいと思ったら、この本は、必ず参考になります!
更に、実例をこと細やかに挙げながら紹介している本文を最後まで読んでも、もしもまだ不安を感じるのなら、奥付にある「体験型ゲームLARP普及団体CLOSS」に、問い合わせてみてください。
はじめのご挨拶にも、「お気軽にお問い合わせください」と記されています。
手は差し伸べられているのです!
終わりに
末筆ながら、この度こちらの書籍を取り扱うことを快諾下さった体験型ゲームLARP普及団体CLOSS様には、今後益々のご発展をお祈りいたしますとともに、心より厚く御礼申し上げます。
また、最後までお付き合い頂きました皆さまにも、ありがとうございました!
なお、こちらの『LARPゲームサークル運営ガイドブック』は、conosにて電子書籍版を取り扱っております。
是非、ご一読ください。
LARPゲームサークル運営ガイドブック 作品情報
発 行 日 2015年4月1日
発 行 体験型ゲーム普及団体 CLOSS
発行責任者 雛咲 悠
価 格 800円 (電子書籍) conosで買う