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アナログゲーム

ハコオンナの生みの親――EJIN研究所 江神号

ハコオンナの生みの親――EJIN研究所 江神号

ハコオンナってなあに?

2016年、夏のコミックマーケット(C91)にて発売された4~5名用のボードゲーム。
ボードゲームでありながら、『雰囲気の怖さ』で怖いと感じられるホラー作品に仕上がってます。

箱絵に描かれた『箱女』のインパクトもあいまって一躍有名になり、ホビーショップでも常に売り上げランキングの上位に食い込んでいるタイトルですので、ご存知の方も多いことでしょう。
ここ最近、第三版も発行されましたので、もしまだ手に取られていない方がいらっしゃいましたら是非遊んでみて下さい。

『一人が箱女役、他3~4人がクリアする側を担当する』という対戦型で、どちらも頭を使うためプレイ時間は長め。
『人狼』のように箱女が活動する時は皆で顔を伏せ、クリアしようとするプレイヤーを襲いますが、死んでしまっても『箱人』となって、今度は彼女と一緒に他のプレイヤーを襲う側に回るので、暇になってしまうこともありません。
ちょっと時間のかかる重ゲーですが、夏にピッタリ。

まさかの舞台化、マスコットぬいぐるみ制作、コミック、小説などなどジャンルを超えて
じわり、じわりと、箱女ちゃんの浸食は始まっているとか。 ――ほら、あなたの後ろにも……?

作った人は?

EJIN研究所の江神号さん。茶色の帽子に丸い金色のペンダントとメガネがトレードマーク。
基本的に一人で、アイディア出しからデザイン制作まで行っている。

(ツイッターアイコンにもなっているご本人の写真)

今回はそんなハコオンナの生みの親、江神号さんにお話を聞かせて頂きました!

制作者インタビュー

というわけで江神号さん、記事書きたいのでお話聞かせてください。

心得ました! いつもお世話になってますし、何でも答えますよ。

わーい、ありがとうございます♪

なぜハコオンナが生まれたか

では早速。まず、ハコオンナを生み出すきっかけは何でしたか?

僕はそれまでゲームマーケットで売ってたんですけど、2016年のゲームマーケット春の新作が大コケしまして(笑)で、次のゲームマーケットが秋と言いながら12月だったんですね。その頃僕はバイトとゲームの収入半々で食べていたので、次の大きな収入がそれだけ先だと干上がってしまう計算になって、よし夏コミで新作を出そう! 夏といえばホラーだ! ――ということで未経験ゾーンに手を出した。というのがきっかけですね。

これが鍛冶場のなんとやら

ここが作りたかったとか、こだわった所とかはあります?

何しろ急いで作っていたので、深いコダワリ等はなかったです。ただ、僕はホラーに関しては素人もいいところだったし、最低限ホラー好きの人に失礼にならないようなゲームにしようと思って、短期間でかなりの量のDVDを見て怖さや手法を勉強しました。

ちゃんと勉強して作ろうって、江神号さんは真面目ですよね。

いやだって、ハコオンナが売れなかったら僕、飢えて死ぬんですよ?(笑)
僕の場合、心の中の黒い物を吐きだして作品を作っているというか、「チクショー! やってやるーっ!」って湧いてくるものが創造意欲に繋がってるので。

ほうほう?

本気で追い詰められた時って、わりと良いものが作れるんですよね。逆に、順風満帆の時には全然作れない。だから今新作を作ろうとしても、多分コケます(笑)

えぇぇ、次はサカサオンナ(逆女)で、三作目にオノオンナ(斧女)出すって言ってたじゃないですか(笑)。――まあその話は後でゆっくり聞かせて貰うので、ちょっとおいといて。(ぽいっ)

ホラーとボードゲームの相性の悪さ。

ハコオンナを作るのに、難しかった所とかってありますか?

あります。そもそもボードゲームとホラーって相性が悪いんですよ。例えばキャラクターがこの駒だとして、自分はプレイヤーとしてそこに座ってますね?

ふんふん、このボードゲームの駒が私と。

ハイ! 今、このキャラの目の前に生首が落ちてきた! ――って言われて、怖いですか?
これって多分『びっくり』はするけど、『怖く』はないんです。でも、もし今お化け屋敷にいて、自分の目の前に生首落ちて来たら怖いですよね?

あー……確かに!

そう、これが不思議なんですけど。人間って、目で見て、自分の状況を頭で考えて、あっ怖いって脳が判断してはじめて怖いって思うんですよ。なので、雰囲気がないとビックリになってしまって、怖くはならないんです。つまり、ボードゲームでも怖く感じさせるには雰囲気が大事。雰囲気作りは徹底しました。それでどうにか『怖いかな?どうかな?』というところまで持っていけた感じです。

ふむふむ。

あとはイメージの落差といいますか、一般的なホラーのイメージを損なわないものを作ろうと考えました。あーこれは「ホラーマニアが良いと思う作品」じゃ怖くならないなって思っていたので。山ほどホラー作品は見ましたが、ホラーについてガッツリ勉強する前に一度、「ホラーを知らない僕のホラーのイメージ」に合わせて試作品を作っておいて、そこへ沢山の作品を見て学んだことを必要なだけ取り込むような形で完成させました。

なるほどー。ホラーを知らないで作ったからこそ、客観的に見てもホラーを感じられるゲームが出来たのかもしれないですね。

ハコオンナに関しては、本当に色んな要因が良い感じに噛み合ったなと思ってます。

直感型のクリエイター

クリエイターの皆さんと話をしていると、『遊ぶ人が楽しいと思ってくれる作品を作りたい』という話を良く聞くんですが。ズバリ、江神号さんにとっての『楽しい』ってなんですか?

『嬉しい』はそれなりにありますが、『楽しい』は僕自身あまり感じない感情で。あえて言うなら『参加している感』かなぁと。

ほほう? 『どうやったら楽しいって思うかな』とか考えないですか。

そうですね。僕の場合、ゲームを作る時にはまずアイディアをバーッとたくさん出して、いけそうだなと思う物を形にして、まず遊んで貰ったりして反応を見るんですけど。『あ、これは楽しそうだ』って案を残して、反応が微妙だなって思った物は捨てます。

一つの案から、こうすれば面白くなるだろうってロジカルに考えるタイプではないんですね。

完全に直感ですねー、計算とかホント無理(笑)。ドイツゲーム作ってる人とか、『ここをこうすれば面白くなるだろう』ってロジカルに考えられるクリエイターも居ますよ。でも僕の場合は『楽しそうな反応があったアイディア』を、展開がドラマチックになるように、起伏があるように、ワンパターンにならないようにと考えながら、お弁当作るみたいに色々詰めていって、その結果が『楽しい』になるというか、『楽しいって言って貰えたら成功!』って感じで。

なるほど。んー、もう一回遊びたいと思わせるような工夫とか、コツとかは?

それも僕の感覚だと逆ですね。『もう一回遊びたいと言わせるところまでゲームを作り込む』んです。ゲームごとにその感情の出処は違いますし、手法も違うので色々試していって、『「もう一回」にたどり着いたらゲームの完成は近い』っていう感じ。

ふむー、なるほど。自分の勘と周りの反応を見ながら探りつつ作ってるんですねぇ。

ハコオンナの舞台化について

そうそう、ハコオンナがまさかの舞台化とか、ぬいぐるみが出来るとか色々と伺ったので、趣味の繋がりとかそういうのかなって思ったんですけど。今ボードゲーム以外にハマっていることとか、新しくやってみたいことなんかはあるんですか?

無いですねー。僕はもうデジタルやアナログも含めると20年、ゲームという畑から出ていないんですよ。その経験しかないんで、外の世界に出ても恥をかくだけだなって思ってて。自分では外の世界(笑)には興味はあまりない感じですが、色々な人とお話している内にどんどん話が進んでいって、そのままお願いした感じです。

あぁ、何かのきっかけでひょいと、出来る人が集まって創れちゃうことってありますよねー。私もTRPGのリプレイ書いた時がそんな感じでした。そういうのをきっかけにして一緒に新しいこと始めるのって楽しいですよね。

いや~……色々なお誘いを受けるのは凄くありがたいし、出来上がりは楽しみなんですけど。ホントに僕はゲームを作ることしかやってこなかったんで、それ以外のことは手を出さないことにしてまして(苦笑)。

そうなんですか? ちなみにボードゲームが舞台化って、ちょっと想像出来なかったんですが、内容的にはどんな感じになるんです?

何も。全然知らないです。本当に丸投げしてしまっているので。中身については見てないんですよ。

え、全く? 台本とか見せて貰ったりとかも?

設定的にどんなふうな裏設定考えてましたかとか、そういうのはヒアリングしてもらいました。あと、一応設定はこんな感じでどうですかーとか、投げて貰ったりはしたんですけど、基本全部お任せにして僕はノータッチ。未経験なことに下手に口を出してもただ質を下げるだけになりそうなので。餅は餅屋って言いますし。

流石に、全く何も言わないのは勿体ないような気が……。折角ならこういう風にして欲しいなーとか?

結局、僕が好きに作れるわけじゃないですからねー。ホントに納得いくまでやろうと思うと、「違うそうじゃないっ、俺の作品を壊すなーっ」ってことになりかねないじゃないですか(笑)。どこまで口を出しても良いのかとか、そういう距離の取り方、僕は本当に下手で。

あーそうか、作品作りってこだわり始めたらきりがないですもんね。監督役って、現場監督のやり方も尊重しなきゃいけないし。相手を立てつつ、自分がやりたいことをやって貰うって難しいかも。

そう! それなんですよ。同じジャンルの中でさえ場所によってやり方違ったりするのに、全然違う畑に首を突っ込んでも足を引っ張るだけだなって思いますし。変に口を出して中途半端になるのも嫌なので、舞台のことは舞台をしてる方たちにぜーんぶお任せ。INEスタンプでもぬいぐるみでも、作りたいって思ったら好きに作って下さーい、出来上がったら見せてねーって感じの動きの結果です。

なるほどー。まぁ、中身を知らない方が完成品をたのしみに待てますし?

はい。それはすごく楽しみにしてます。

なんと、ネット声優までやっていたらしい

そんな流れがあると、もっとこういう話が来ないかなーとか、考えたりしませんか?

まぁ今もう、舞台化からコミック小説とか色々なお話を頂いているので。『あーどこかでもう1度ブレイクして、アニメとかそういう方に広がってくれないかなー』とか甘い期待はしてます(笑)。そしたらワンチャンありそうじゃないですか? もしボイスドラマとか、アニメとかの話が来たら、若い頃にネット声優をしてた頃の仲間や後輩も呼びたいと思ってて。

ネット声優? ――言われてみれば、確かに聞き取り易くて、良い声してますね。(なお、取材後のテープ起こしで改めて聞いて思いました。江神号さんの声はイケボです。(断言))

あ、まだ大阪にいた頃ですけどね。昔は同人ゲームの声を当てる仕事が結構あって。その頃は周りがイケメンの声ばっかり上げてたんで、僕はあえて『老人』とか『マッチョ』とか変な声のサンプルを置いて、そういう役で呼んで貰ってました(笑)。

なんと。ゲームはアナログからデジタルまで色々ってお話でしたけど、ゲームの声優業まやってたんですね。――ちなみに他には具体的にどんなことをやってきたとか聞いちゃっても?

ボードゲームを始める前は初音ミクのアドベンチャーゲーム作ってたりとか。他にもモバイルゲームエロゲ実はBLゲーム(女性向けのエロゲです)も(笑)。

マジですか(笑)。

あとはTRPGだと……同人では「ジャイアントアレージ」っていうロボット裁判モノ作ったり、海から来る大怪獣とロボットが戦うパシフィック・リムみたいなの作ったりしてました。富士見書房さんとお仕事させてもらったこともありますよ。結局、僕の名前は出ませんでしたが。

ほぉぉ……本当に色々やってきてるんですねぇ。

色々と長いこと無駄にウロウロしましたねー。――で、そんな20年の経験があってもボードゲームは300売れたら良い方だったのに、箱絵一枚スゴいの貰っただけでいきなり3000個以上の大ヒットっていうね(笑)。いや、もう、ホントこの絵スゴイ。GENkさんスゴイ。

この箱絵のインパクトは実際、やばいですよねー。まぁただ、今もこんなに売れ続けてるのは、ゲームとしても面白いし、新しいからだと思いますけど?

いやGENkさんに絵を頼んでなかったら、ハコオンナがここまでヒットすることは無かったです。絶対。やっぱり見た目のインパクトって強いんですよ。

他の作品について

そういえば江神号さん他にもボードゲーム出してますけど、ハコオンナが売れてから他の売り上げが上がったりとかは?

いえ全然(笑)。他のはこれまでと変わらない感じでボチボチですね。

あらら、私は「マタドーン」とかも結構好きなんですが。

牛『で』戦う、マタドーン!

『マタドーン』! 赤いマントで右へ左へ、闘牛士たちが牛『で』他の闘牛士『と』戦う。4人まで遊べるゲームですよ。

あ、じゃあ折角なんで宣伝しましょう! まずコノスでも扱ってる、『犯人は探偵の中にイる』を。

ジジ抜きで推理!『犯人は探偵の中にイる』

『犯人は探偵の中にイる』はですね、僕がまだモバイルの会社に在籍していた時に、ふと「ジジ抜きで推理」のシステムが頭の中にポンと降りてきて、これはいける、売れる! って思って会社を辞めて作ったんですね。

えっ! いきなり辞めちゃったんですか?

そうなんです、辞めちゃったんですよー。正直不安できつかったですけど、僕は追い詰められてる時の方が良いもの作れるんで(笑)『犯人は探偵の中にイる』は実際いまだに売れ続けてるし、評判も良いタイトルなんですよ? 面白いゲームなんで是非遊んでみて下さい。

下にリンクも貼っておきます。あと、他に売り込みたい作品があればどうぞ。

ハコオンナは飛び抜けましたが、他のゲームもホント頑張って作ってるので、これ! というのは選べないです(笑)。僕のゲームは毎回出すタイトル出すタイトル世界観もシステムもバラバラですが、『面白いと思ったものを枠にとらわれず作っている結果』ですから、どの子も面白いですよー。見かけたら遊んでやって下さーい。

ありがとうございましたー。

ゲームクリエイターを育てたい

勇義マークは面白さお墨付き!

うーん、江神号さんのゲームは、直観と思い付きで面白いと思った物を作ってるというだけあって本当に色々だから、ジャンルでは探せなくて。このマークが付いてたら江神号さんのゲームなんですよね?

あ。そのマークなんですけど、実はそれ『僕が作ったゲーム』に限って付けてるわけじゃないんです。

そうなんですか?

さっきチラッと出た『マタドーン』なんかもそうで、あれ実は、ゲームデザイン見ると僕の名前は2番目で。インで作ったのは僕の弟子なんですよ。

おぉ、弟子がいるんですか。

代アニのゲーム科で講師をしていた時期もありまして(笑)。あ、で『中身が面白くても売れない』って話なんですけど。ボードゲームって毎年すっごい沢山の新作が出てますが、実際に遊んでから買うことって少ないじゃないですか? 新作だと前評判もないし。

まぁそうですよね。

何より今はTwitterですぐに情報が拡散されていく時代なので、ボードゲームは『中身の面白さ』より『話題性』でまず売れるんですよ。ハコオンナは『写真のインパクト』で、どんどんリツイートされていったのが本当に大きかったし。

なるほどー。

で、そうなると『絵だけ気合を入れれば、面白くないゲームでも売れる』って考える人が絶対増えるじゃないですか。

ま、まぁ……いるかもしれませんね。

今、折角ボードゲームが流行り始めて、今までアナログゲームに手を付けていなかった新しい層の人たちが増えてきてる。僕はこの流れを止めたくないんですけど。もしそういう見た目に騙されて、つまらないゲームばっかり掴まされたらどうなります? 『ボードゲームってこんなもんか』ってなって、買うのを止めちゃいますよね?

ボードゲームって決して安い買い物じゃないし、ハズレ引いたら悲しいですよ。

僕は『面白いボードゲームを買って遊んで欲しい』し、『あーボードゲームって面白い!』と思って、『もっともっと遊ぶ人口が増えて欲しい』んです。だから僕は、ボードゲームを作ろうとしてる人にアドバイスを求められたら出来る限り垂れ流すようにしていて。そんなことをしてるうちに周囲にクリエイター仲間が10人くらいに増えました。

10人、凄いですね。

――で、そうやって出来たゲームの中で、僕が『これは面白い!』って思ったものにさっきの『勇義マーク』を付けるように、これからしていければなと。今はまだ自分の作品だけですが、これが付いてたら僕のお墨付きなので、見かけたら是非手に取ってみてください。

なるほどー。このマークが付いてたら、江神号さんのお墨付きだそうです!

ガンガン追い越していって欲しい

面白いゲームを作れる人が増えてくれるのは良いことだと思います! ――でもあんまりノウハウを広めすぎると、今度は自分が売れなくなっちゃったりしませんか?

いやむしろ、負けたいんです。もう是非、僕を負かして欲しい。

え(笑)。

さっきチラッと話しましたが、僕は追い詰められたり、『チクショーッ! コノヤローッ』ってなった時が一番作りたい気持ちが湧くんで。あー例えば、前に実際あったんですけど、色々ノウハウ教えてきた中の一人の作品が出来たんですが、それがもうスッゴイ良い出来で。で、その時に彼が言うわけですよ。

なんでしょう。

「EJINさんにはまだ買ってもらってなかったですよね? 買って下さいよ」って言われて手渡しで買わされまして(笑)。普通、多少でも恩義に感じてたらありがとうございましたってお礼に渡すものじゃないですか? 実際凄い良い出来だってのは僕も認めてたんですけど、流石にカチーンと来て、「お? お前ー、俺がそれ買ったらもう、俺とお前は対等だかんな? 一方的に教えたりサポートしたりしないぜ? 横関係だぞ? ライバルだぞ?」って言って。「はい、良いっすよ」って。

えぇぇ、教えてくれた人に「買ってくれ」は、なかなか凄いですね。

まあ、情報の価値とか、人それぞれですからね。逆に言うと、僕にとっては情報やノウハウは積み上げてきた生命線なわけで、それを垂れ流した結果がこれだよ!的な。で、そうなると僕は“ッカーン!”(プロレスのゴングが鳴る音)。僕のクリエイタースイッチ一気にONですよ。「コノヤローッ 負ケルカーッ!」――って(笑)。

ライバルがいてこそやる気が出るってやつですねー。そういうのも良いと思います!

そんな感じで追い越されれば、追い返さない訳にはいかないですからね。

売れて初めて知った落とし穴

――あ、これはここで言って良いのか正直悩むんですけど。ボードゲームの売り方について、これちょっと気を付けなきゃいけないなってことがあって。

おっ? なんですか。

同人ゲームの売り方の話なんですが、僕はこれまでイベント販売数100個~300個、生産数500~1000個くらいの規模でずーっとやってきたので、その数を売るノウハウは誰にも負けないくらいの自負があるんですけど、ハコオンナで急に何千個も売れ始めたら、売り方が本当にぜんっぜん違って驚きました。

ほほう、例えば?

まずイベントで300個を超える規模になると、モタモタしてると列が自動生成されますので、200個売るために必須だったテーブルの陳列がどうとか、人を呼び込むための展示がどうとか、そういうのが一切意味がない。いかに効率よくお客さんを捌くかと、そのための人員とテーブルの配置が求められちゃいます。もうただひたすらメインの作品だけを売り続けて、とにかく列が伸びて邪魔にならないように必死にさばく感じで。

あぁコミケの壁サー(規模の大きな売り手)とか見てると、ホントそういう感じですよね。

イベント以外でも色々変わってきます。たとえば生産数も3000とかそのくらいのラインになると、ゲームショップへの「委託」以外にも「卸し」っていう選択肢も出てくるんです。卸した先のメーカーさんやお店さんが付き合いのある問屋さんに話を持っていってくれて、問屋さんの顔が利く複数のお店さんが売ってくれる形態です。一気に取り扱ってくれるお店が増えます。これが弊害も多くて。

扱ってくれるお店が増えるのに、問題があるんですか?

実は僕『とあるお店』が嫌いなんですけど。そこにハコオンナ(第三版)が並んでしまったんです。卸した問屋さんの取引先だったんですね。しかもこれがゲームマーケット直前にインターネットで予約を開始して、イベント価格より安く売られるわけですよ。もう僕ホントにびっくりして。

えぇぇ?? 古い版とか中古販売品じゃなくて、新作が割引されちゃってたんですか?

『とあるお店』は、『ここは本当に安い』っていうイメージさえお客さんに定着させられれば勝ち、という販売戦略なんですね。新発売でも原価割らない程度のギリギリまで下げちゃうのがザラ。ただ、これって大量に流通する企業や大手にとっては『常識』なんですよ。ビックカメラとかAmazonとか見ても、先行販売で割引なんてどこでもやってますよね?

言われてみればそうですね。

でも、たちみたいな規模でやっているところは、そんなことされてゲームマーケットで売れるはずのものが売れなくなったら大問題です。なにより、こうして値段を容赦なく下げられてしまうと、地方の小さなボードゲームのお店とか、プレイスペースで販売もしてるところとか、そういうところがダメージを受けるんですよ。

地方の小さなお店ですか?

僕はハコオンナの新版出す時にルール改訂とか追加カードとかを、前の版買ってくれたお客さんにも連絡くれれば追加で送ったりしてるので、『どんな所から買いに来てくれてたのかなー♪』って見てたんですけど、全然東京と大阪だけじゃないんです。びっくりするくらい日本全国に散ってる。『うわこんなに、日本中でハコオンナを遊んでくれる人がいるんだ!』って知ってから、僕は地方のお店さんを特に応援しよう! と決めてて。

そっか、日本中に人は住んでるんだし、遊びたい人は全国にいますよね。まー地方だと人口が少ないから、経営すごく大変そうですけど……

実際見に行きましたけど、カツカツでやってるところも多いですよ。でも、そういうお店で遊んで面白かったゲームを、そのお店で買わずに『とあるお店』で検索して買われるってことが実際にあって。これでは、これからボードゲームが広がっていくのに必要不可欠なはずの地方のお店さんの体力が容赦なく削られてしまう!って。

あ……わかるー。ホント、見てる前でい通販探してポチポチされるの、あれ精神的にもキッツイんですよね。ボードゲームってそもそも特に儲かるような業種ではなくて、『好きだからお店をやってる人』ばかりですし。店長のモチベーションが保たなくなったら、ゲーム屋さんは簡単に潰れますよ。

僕が盲点だったのは、『卸した先の問屋さんが、どのお店に商品を送るかまでは把握できない』ってことですね。結果、あのお店にまで流れてしまった。これまで、一つ一つお店を回って売ってもらっていたので、そういうことになる想像がつかなかった感じです。いい勉強になりました。

なるほどー。確かに『これから頑張ろう』って人は知らない落とし穴ですよね。作品がヒットして問屋さんに卸すまでになったら、良ーく良ーく考えて売りましょう!

これからのEJIN研究所の動きに注目!

うーん、あと最後に新作の話でも伺って締めようと思ってたんですけど……新作ヤバいんですか?

ヤバいっすねー、新作のサカサオンナ(逆女)がねー、詰まってますわー。もう素材も既に色々買い揃えて準備始めちゃってるんですけど(笑)。これがコケたら僕、ホントに一発屋で終わりですよねー(苦笑)。

そんなにヤバい感じですか……

まだ仮組みの状態で試遊してもらったら、ぜんっぜん盛り上がらなくて皆が揃って下を向くっていう。いやー……もう、って感じです(笑)。まあ、いつもスタートはそんなもんなんですが、それにしても酷いだろっていう。
――で、出来が悪いのを目の当たりにすると、今ちょっと自分の中にある迷いが鎌首をもたげるわけです。さっき仲間が10人くらいできたー、って言ってたじゃないですか。

はい。

正直、いいゲームを広めたい、とか、ノウハウを垂れ流す会をやりたい、あるいは比較的力のあるサークル間で情報交流をしたいとかって色々全部やろうとすると、結構それだけで手一杯になったりするんですね。気がつけば自分のゲームは全く手が出せていない的な。このまま自分一人で新作を作り続けていくか、そっちを少し休んで10人鍛えてクリエイターの数を増やすかっていう二択で迷うんです。

うーん……クリエイターって職人の世界だと思うので。特に直感と経験で作っていく江神号さんみたいなタイプだと、習って覚えただけで作れるってものではないと思うんですよ。『こうすれば面白く作れる』って実際に自分で作って、見せて、売って、『技術は見て盗め』っていうのが本来の姿じゃないですか?

――おぉ、ガチ正論。正にその通りですね。

なのでまだ、自分が手を止めてはダメだと思いますよ。――まぁ、『こうすれば売れるゲームが出来るんだ』って言いながら作ってみせて、二作目が大コケってことになったら正直メッチャメチャ恥ずかしいですけどね?(笑)

あ。うっわー、それ超ーっ恥ずかしい! 最っ高にみっともないやつじゃないですか! それ、やりてー!! 超やりてーーー!!(笑) 『二作目が作れなくて潰れる作家』とか設定的に美味しすぎますよ! 是非そこを目指します!!

いやいや、目指さんで下さいよっ?!(笑)

いやもう、是非っ!

是非じゃないですっ(笑)。

おわりに。

――ひゃー、笑った(おなかいたい)。えーと、大分長くなりましたし、この辺にしましょうか。今日は本当、長々とありがとうございました。

いえいえ、こちらこそありがとうございました。それでは、今後ともよろしくお願いします。

こちらこそっ。次のゲーム会でお会いするのも楽しみにしてます♪

関連リンク

皆様も最後までありがとうございました。
ハコオンナ第三版、好評発売中です!

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舞台版ハコオンナ

 


なるねこ

普段は池袋でアナログゲーム向けのプレイスペースを開いているので、TRPGやボードゲームを作っている人たちのお話を聞いて記事にしていけたらと思っています。

1 Comment

  1. 安くて予約とっていた『とあるお店』って、駿○屋じゃ… 確か、予約で並んでいたのを見たことがある

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