ピカレスクロマンTRPGの生みの親――グループSGR

作者さんに聞いてみよう(インタビュー編)

はい、ピカレスクロマンTRPG紹介、こちらはインタビュー編です。
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ピカレスクロマンTRPG、実際遊んで面白かったので、制作者のシグレさん(グループSGR)にお話を聞かせて頂きました。
シグレさんとは初めましてでしたが、とても気持ちよく引き受けて下さいまして。ありがとうございます!

グループSGRのシグレさん

【グループSGRロゴ】

初めましてシグレです。グループSGRは、僕シグレと卓を囲む身内の協力で運営しているTRPG同人サークルです。拙著、ピカレスクロマンTRPGが処女作で、今後もTRPG関連の書籍を出していけたらと思っています。

ピカレスクロマンTRPGで表現したかったもの

ピカロマを先日遊ばせて頂いて面白かったので、気になってお話させて頂きました。オリジナルのシステムを作ったきっかけとかはありますか?

そうですね……元々物語を創るのが好きで、GMばかりやっていたんですが、シナリオ、ブログ、オリジナル設定、と順当な流れでシステムを創ろうという形に(笑)

順当に(笑)。んー、ピカロマの中で『こだわったところ』はありますか?

やはり、『ピカレスクロマン』なので、博奕のような心理戦やジレンマを味わって欲しいなと。既存のギャンブルを意識して創ってる部分はありますね。例えば【コロシ判定】は『手本引』という、「賭博の終着駅」「究極の心理戦」と呼ばれるギャンブルを参考にしています。

あー、あのジャンケンからの能力判定みたいなやり方は面白いと思いました。確かに読み合い次第で逆転出来たり、ギャンブルっぽかったですね。

ポーカーでも、自分の手札(能力)が悪くても、読み合いやチップの張り方で勝てたりしますから。その辺りが「財」のシステムとか、コロシ判定で再現できてたら良いなと。

確かに、判定の後で財を何点積むべきか悩む辺りチップをbetする感じでしたね!

そう思って貰えてればよかったです。実際のポーカーのようにレイズを互いに繰り返せたりすると冗長になるので、そこは調整しました。ルール面はなるべくシンプルに、を心がけました。

一発勝負の方が『らしい』し、分かり易いですよね。

やはり同人システムなので分かり易さは意識しています。市販は市販されるだけあって、面白さはある程度確立されてる安心感があって、多少煩雑でも「やってみよう!」という気になると思いますが、同人は「面白いのか?」というところからスタートだと思いますから。

皆さん結構分かり易さは重視してますよね。

そうですね。少しでも煩雑だと、面白いかどうかもわからないものに、一生懸命理解する努力はしてもらえないだろうなと。

ピカロマはとてもシンプルに、分かり易いルールになっていると思いますよ!

参考にしたものは?

実際に遊んでみて、最後の『良かったと思うプレイに投票』とか、戦闘がサクッとダイスの振り合いで終わる辺りが凄くサイコロフィクションっぽいなと思ったんですが、普段よく冒険企画局さんのゲームで遊んでたりします?

うーん、サークル名(グループSGR)からも分かる通り、殆どSW2.0(グループSNE)ばかり遊んでいたんですが。オリジナルシステムを作るにあたって色んなルールブックを読み漁りまして。そこで初めて冒企さんに出会ったんです、特に『シノビガミ』には感動しましたね。リプレイもついていて六面のみで、サイクル制、初心者に対する敷居がなんて低いんだ!! と(笑)

確かに、シノビガミのシステムは秀逸ですよね!

ええもう、本当にカルチャーショックだったので、影響されているところはあると思いますね。あと参考にしたとすれば人狼でしょうか。それから……レイアウトはスカイノーツをお手本にしていますしっかり見出しがあったり、ヘッダー・フッターをきちんとすると綺麗だ!と思ったので、そこは意識しました。

本当に見やすく纏まってました! 見出しをしっかりしてるから、索引が無くても困らないくらい! ページ数も少なくて読みやすいし、凄く作り慣れている感じがしましたよ。

DTPは初めてというか、デザイン系は全くの素人だったので、そのあたり見やすいと言っていただけるとうれしいですね。索引も最初は付けてたんですが、出来上がってみたらむしろ冗長な感じだったので削除しました。

本作り初体験で四苦八苦

あれ、DTPも初めて? 今までSWの同人作品を作ってたサークルさんじゃないんですか?

いえ、こういった本を作るのが初めてで同人誌を買ったことも、イベントに参加したこともなかったので、かなりあたふたしてました(笑)。絵師さんも全て外注ですね。同人活動はこれからです。

えぇぇ本当ですか?! 処女作ってオリジナルシステムが初めってことだと思ってました。

いや本当に、裁ち切りもわからないレベルで(笑)。印刷所の人から教えてもらいました。絵の外注をするのも相場が全然分からなくて不安だったんですが、表紙のむつみなとさんが、元々卓仲間だったので丁寧に教えてくださって。本当にありがたい話です。

うわー、教えて貰いながらでも、自分でやろうっていうのは凄いなぁ……私だったら出来る人を探して丸投げしてますよ(笑)。

僕も丸投げしたかったです(笑)。特にDTPソフトの使い方がまったくわからなくて……悪戦苦闘しながらずっとそう思ってました。でも一番最初はDTPも知らずにワードで作ろうとしていたくらいで(苦笑)。あれは狂気の沙汰でした……Indesign(DTP用ソフト)買って正解でした。

ですよねー(苦笑)。あー、そこからってことは、イベントで売ったりするのも初めてだったんですよね?

あ、イベントには未だ参加したことはありません。全部、通販と委託ですね。

通販と委託のみ?! それも珍しいですね。イベントってそれ自体が広告だと思うので、通販と委託だけだと周知していくのが相当大変じゃなかったですか?

そうですね。Twitterで最初に宣伝した時は5~600RTぐらいしていただいて。その後委託も始めて、イエローサブマリン様にTweetしてもらったのが、1000RTぐらい行きまして。

おー、流石イエサブさん。

こかげ書店様にもレビューと一緒に宣伝して貰えましたし。やはり委託先から宣伝してもらえたのが大きかったと思います。通販だけでしたら、初刷の200冊も売り切れたかどうか……。それと、純粋に買って遊んでくださった方が布教してくださったのが大きかったですね。

それがもう三版まで……おめでとうございます。口コミが上手くいった感じですね。私も実際に遊んでみて面白かったから、記事を書こうと思いました!

恐縮です。

PvPが苦手だからこそ生まれた、PvPvGMというかたち

それだけ苦労してでも「ピカレスクロマン」を作りたかった理由、というか。裏切者が必ずいるシステムってあまり無いですよね。悪人同士の油断できないやりとりみたいな殺伐としたものが描きたかったとか、表現したかった部分はありますか?

元々、本のジャンルとして「ピカレスクロマン」が好きで。オリジナルを創るんだったら、自分の好きなものを創ろう! とこうしたジャンルにしました。ただ……。実は僕がPvPは苦手というか嫌いで……。

えっ?! PvP苦手なんですか?

はい、苦手なんです。でも、ピカレスクロマンで仲良しってのはおかしいので対立はさせたい。それで『RP上は殺伐としてるけども、PL同士はギスギスしないように』と考えたのがPvPvGMというかたちでした。

PvPの苦手なところ

ちょっと意外でした。シノビガミ(PvPシナリオが多い)がお好きなら、てっきりもっとガチガチの対立型にしたかったのかと

シノビガミのシステムには本当に感動したので、何回かやってみたんですが……どうしてもPvPシナリオが合わなくて。作中でも少し触れていますけど、『悪党は無惨な敗北が常ですが、あくまでTRPGなので、ある程度のヒロイック性は平等に確保されていたいな』と。

あー。PvPシナリオって『キミの目的は、世界の破滅だ』みたいな秘密をもらって、『今回はラスボスとして他のプレイヤー達を全滅させてください』とかサラッと言われますからね(苦笑)。開き直ってバトルロイヤルを楽しめれば凄く楽しいんですけど。苦手な人は本当に無理っていう。

そうなんです、『プレイヤーなのに、ラスボス的な負け役をやらなきゃならない』みたいなのはちょっと……。

PvPvGMの狙い

なので、ピカロマでは『対立』はしても、『プレイヤー同士でただ潰し合う』かたちにはしたくなかったんです。まず、ピカロであるPC達>>>越えられない壁>>GMが担当する、VIPなどのNPCや有象無象の小悪党って構図になるよう意識して、NPCでは絶対ピカロ達に勝てないようにしました。

『絶対に倒される役』全てGMに任せてPC達は『あくまで対等に、ただ格好よく勝負出来るようにしたい』って感じですか。

はい。いままで、PvPシナリオは苦手だからピカロマを敬遠しているという声もありましたが。『理不尽に負け役を押し付けられない』ためのPvPvGMというかたちなので。PvPが苦手な人でも、そこは心して遊んで貰えたらなあと思ってます。

なるほどー。確かにゲーム自体は純粋な『得点勝負』なので、『別PCの妨害をし過ぎても、自分の得にならない』からあまり狙わないし。実際に破滅に追い込まれる役は、『カモであるVIPやNPC(GM)だけ』でしたね。

そうですそうです。ピカレスクロマンを表現するための対立要素はありますが、ピカロマの対立は『PvP』ではなく、倒され役をGMが用意してくれる『PvPvGM』というところをもっと皆さんに知って頂いて、安心して遊んで貰いたいです。

実際にやった感想ですが、ピカロマの戦場は『利権争い』のみ。殴り合いは全て演出ですので、安心して殴り合えますよ!(笑)

今後の展開について

同人TRPG作成手順のノウハウを紹介したい

じゃあそろそろ、今後の展開とか、新刊の情報とかを伺って締めたいと思いますが、この先どんな感じで活動される予定ですか?

今後はグループSGRの作品をボチボチ出しながら、グループSGRのHPとか創ろうと思っているんですが。そこで、『同人TRPGシステムの作成手順』をノウハウにまとめて紹介したいなと思ってます。今回初めてオリジナルシステムを作ってみて、色々わからなくて面倒というか、無駄に時間がかかってしまったところがありましたから。

あ、作成手順のノウハウ紹介は面白そうですねー!

やっぱりこれから、TRPG界隈が盛り上がって欲しいという思いはあるので。もしかしたらどこかにあるかもしれませんが、自分が調べた限りだと、システム創りに関するノウハウは全然見当たらなかったんですよ。

初めてで苦労した経験から書いたノウハウは、初心者の方向けに凄く役立ちそうです!

創りたい本がいっぱい!

初心者向けSW2.0のシナリオ集『ヒーローアドベント(仮)』は8月発刊予定!

あと、新刊の予定などをお願いします。

今のところ、来月(2017年8月)にSW2.0のシナリオ集を出す予定なのと、冬のイベントに向けて大正浪漫TRPGというシステムを作ろうと思っているのと。それ以外に作りたいなと思っているものが二つあります。その内の一つは間に合えば冬のイベントに一緒に出したいんですが……

おぉ、多い! ちなみに~、来月に出す分は、そろそろ表紙絵とか出来てたりしませんか?(わくわく)

絵はピカロマの表紙と同じ、むつみなとさんにお願いしているんですが。今はまだ線画状態なのでオフレコで。――見ますか?

見ますー!! おぉー、美人っ。これは、仕上がりが楽しみ♪

SW2.0の初心者向けシナリオ集で、タイトルもまだ仮ですけど、『ヒーローアドベント』になると思います。

おっ、ピカロマとは打って変わって英雄譚っぽいですね?

ソードワールドのPCは英雄候補だと思ってるので。特に今回は、初期作成や3レベルとか低レベル帯を対象にしていて、『英雄(候補)降臨!』みたいなニュアンスですね。文庫本の基本ルールのみで遊べる低レベルシナリオ集で、ぜひこの機会にSW2.0を遊んでもらいたいな、と考えています。

ほうほう、新しくSW2.0を始める人向けのシナリオ集ですか。王道直球の英雄譚シナリオ……良いですねー! 私は直球シナリオも好きですよ。

大正浪漫TRPGは冬頃を予定

それから冬のイベントに向けて作っている大正浪漫TRPGは、最高のPCラブゲーにしたいなと思っていて(笑)。TRPGに慣れてない人でも楽しく自PCが他PCと絡みやすく遊べたら良いなと思って創ってます。

ほう! PCラブ!(笑)

まぁPCラブは半分冗談として。『気軽にPC同士で絡める』、というのと『シティアドを気軽に回せる』仕組みにしたいなと。――といってもまだ企画段階でほとんど決まっていないんですが(苦笑)。ピカロマが対立型でしたし、次からはガッツリ協力型のシステムを作っていきたいんですよね。

大正浪漫も夢がありますよね。でも歴史は苦手だったので、実は大正時代って言われても、はいからさんくらいしか分からないんですが(苦笑)。

あ、それで充分遊べるようにするつもりです。詳しくなくとも、大正時代の雰囲気を味わえる感じで。GMも詳しくなくとも回せるようにする予定ですよ。

おぉ、それなら楽しみです!

冬のイベントに受かったら、ですけどね。それに、実は今年から就職してしまって、時間があまり使えなくなってしまったんですよ……あと一年早くTRPGと出会っていればと悔やまれます。

あー、タイミングってありますよねー。うーん、ピカロマで知名度が上がった今の内に新作を出していきたいところですが、入社一年目で仕事と制作を両方やって、無理して身体壊したら元も子もないです。健康第一、仕事も大事にして下さいねー?

はい、急ぐと絵師さんの負担も増えることになりますし、冬のイベントは目標にするくらいでほどほどに頑張りますね。

応援してます! 後の二つというのは、何か決まってるところありますか?

一つはまだ全然で。一つは『半額弁当争奪TRPG』という二次創作的な……現在、絶賛テストプレイ募集中です(笑)。

何それやりたい(笑)。

テストプレイはお願いするなら多分オンセになると思います。ただ本当にそこまで手が回るかは分からないですね。

オンセかー、私はオフセ専門なのですみません。まぁ、就職したばかりで無理するのもよくないですし、今制作中の物を優先して頑張ってくださいね?

ありがとうございます。まあ制作はあくまで楽しみとして、ゆっくりやっていきたいと思います。

楽しんで作れるのが一番です! ――さて、では今日はこの辺で。長々とお付き合いありがとうございました。

こちらこそ珍しい体験をさせて頂きました。またよろしくお願いします。

おわりに

グループSGRさん、シグレさん、セッションを体験させて下さったあっぺるさん、同卓して下さった方々。
また、この長い文章を最後までお付き合い下さったみなさま、ありがとうございます!

ピカレスクロマンTRPGとグループSGRの活動はまだ始まったばかり、今後に注目です!

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