キミも悪党になろう!(プレイレポート編)
今回は2017年3月に初版が発売され、同年6月時点でもう既に三版の販売が開始されているTRPGシステム。
『ピカレスクロマンTRPG』についてのご紹介をしたいと思います!
なお、今回の記事は長いので二部構成! こちらは『プレイレポート編』です。『インタビュー編』は末尾のリンクからどうぞ。
ピカレスクロマンとは?
皆さんは『ピカレスクロマン』って何かご存知ですか?
恥ずかしながら私はこの意味を知らなくて、最初に聞いた時は
『え、なに? 想像力がものをいう即興劇?(それはロマネスク)』という状態でした(笑)。
【ピカレスクロマンとは】
16,17世紀のスペインで流行した〈悪者〉ピカロpicaroを主人公とする小説の様式で,その後のヨーロッパ・リアリズム小説に大きな影響を与えた。
悪漢小説,ピカレスク小説,あるいはピカレスク・ロマンという呼称も一般化している。
〈ピカロ〉の語源は諸説あっていまだ定説はない。(以上、コトバンクより)
ということで。平たく言えば『悪漢が主役の話』のこと。
ゴッドファーザー、カジノ、ルパン、ねずみ小僧、ブラックラグーン、ペルソナ5などを想像して貰えるとよいかもしれません。
オンラインセッションにもおススメらしい
なんとも格好良さそうじゃないですか!
といっても、私は言葉の意味すら知らなかった有様。
遊んでもない状態では記事が書けぬ! と思い、実際に卓を立てて遊んで来ました。
唐突な依頼に快く応えてGMをして下さった、あっぺるさん(ツイッター@apperu)にはホント、感謝してもしきれません。
ちなみに私はオンラインセッションやらない人間なので分かりませんが
情報の受け渡しなど秘密のやりとりが結構あるので、オンラインで回すと内緒話が簡単にできて、もっと楽だそうです。
へー、もっと楽なのか……オフセでも充分簡単でしたよ!
ピカレスクロマンTRPGの特徴
私は『掃き溜まりの街で、悪漢たちがシノギを削り合う――』なんて聞くと、「自分以外、全員敵だー!」みたいな殺伐とした世界観を想像していて。
ギャグっぽい世界観や人外同士ならまだしも、普通の人間でシリアスなバトルロイヤルって厳しくない? と思っていたんですが。
やってみたら意外とそうでもなかったのでご紹介しておきます。
まず。このゲームは『使命を達成したり、判定で財や情報や利権数を集めていって、最終的な合計得点が高ければ勝ち!』という、TRPGというよりボードゲームに近い性質のシステムです。
シナリオも
『オープニング⇒各自が街に来た目的を言う』
『ゲームI⇒VIP(今回のカモ)から利権を奪う』
『ゲームII⇒プレイヤーの中で1人指定されている《裏切り者》を当てる』
『エンディング⇒結果発表』
という、とてもシステマチックな進み方をするので、純粋に『自分の勝利点を稼ぐ』ことを最優先にプレイできました。
確かに、他のプレイヤーからアイテムを強奪したり、財を奪ったり、取引を持ちかけておいて裏切ったり、ブラフを掛けたりはしますが。
『TRPGといいつつ、プレイヤーキャラにHPなどの戦闘データが無い』という、私にとってはちょっとびっくりな仕様なので。
邪魔するやつは倒してしまえーと思っても、『データが無いから殺せません!』。
よくある『序盤で殺されて何も出来なくなっちゃったー』なんて事にはならないので、好きなように殴れます(笑)。
判定は、使いたい能力に合わせたロールプレイをして、ダイスを振り合うだけ。シンプル!
先に殴ったもの勝ち(ダイスを振り合って同値なら、能動側が勝つ)のルールがあるので、どんどん自分から動く方が有利です。
プレイレポート
やったことのない方々のために、ちょっと実際のプレイの様子を紹介していきましょう。
プレイヤーの準備は2d6と筆記用具のみ
判定は全て6面ダイス2個で行います。大きな目が出ると嬉しい上方ロール。
戦闘が無いので、マップやコマは使いません。
GMの準備も簡単!
キャラクターシートやルールサマリーは公式HPに置いてありますし。
利権を奪われる役のカモ(笑)である『VIP』というNPCと、ボーナスあるいはトラップになる『JOKER』の内容さえ決めてしまえば、後はルールブックを見ればシナリオ完成!
『使命(達成すると利権を貰える)』や『裏切者』もダイスで決めてOK!
裏切者の役割
いや待って『裏切者』って何? そんな気軽に決めちゃいかんでしょ?? と思った人も居たかもしれませんが。
『裏切者』だからという理由で戦いを仕掛けるような『正義の味方』はこの“街”には居ません。
『ピカロたちから利権を奪い返せ』とVIPに雇われた『裏切者』は、『ゲームII』、犯人当てゲームの『犯人役』です。
ピカロは裏切者が誰かを当てればボーナスがあり、裏切者はピカロに正体を知られなければ利権をGET。決して損な役割ではありません! ちなみに、もし裏切者だとバレてしまっても、『ゲームIIの報酬が減るだけ』です。
正体を見破られるかどうかは『ダイス目次第!』わりと適当にやっても勝てちゃったりしますよ(笑)。
キャラクター作成はたったの3ステップ!
では実際にキャラクターを作っていきましょう。
ステップ1――『Mジョブ(メイン職業)』を選ぶ
まずMジョブを選べば、『暴力』『智力』『色香』『天運』の能力値と、『財』(達成値+1、上限なし)の初期値がほぼ決まります。
まぁ細かいデータはルールブックを見て頂くとして。
『ヤクザ』、『情報屋』、『詐欺師』、『遊び人』、『博徒』の5種類から選択。
各職それぞれにサンプルキャラクターが用意されているので、そのまま写してもOK。
この! サンプルキャラクターのイメージ画が! どれも素敵で!!
特に詐欺師のシスターさん! 私はこのキャラをベースに作ることに決めました。
『神サマ?金以外に何を信じてるの?笑わせないでくれる?』
すごい! 格好良い!
よーし、私もシスター服を着せよう。そしてお金しか信じないぞー!
キャラクターに合わせて、『メインジョブスキル』の中から、好きなスキルを2つ貰えます。
よし、お金を信じるんですから、《金の亡者》は外せませんね!
あとは一応『シスター』だし、嘘を吐いたり裏切ったりするのはちょっと良くないなー、《話術》にしましょう。
ステップ2――『Sジョブ(サブ職業)』を選ぶ
次に21種類のSジョブから1つ選びます。格闘家や弁護士、ヒーローなどから学生や……クズ? ん?
まぁ色々あるので好きに選びましょう。(表があるので、ダイスで決めてもOK)
選んだ職業によって決まった能力値が1点上がり、専用能力が一つ貰えます。
私はもちろん『修道士/修道女』一択。
ほうほう、通常判定する時は能動優先のゲームだけど、シスターは受動側で同値でも勝てるのかー。
――え、シスターで上がる能力は『暴力』?!(笑)
さーこれだけ決まれば、あとは名前や見た目などを好きに設定するだけ!
ステップ3――あなたの望みは?
早速オープニングに入りましょう! おっと、大事なことを決めていませんでした。
ピカロマの舞台となる“街”に入るには、『街に入る目的』を言わなければなりません。
※ちなみに思いつかない場合は、これも表からダイスで決めたりできます。
クズの掃き溜めに飛び込んで、無事に出られる保証なんてどこにもない。
あなたは何か、叶えたいこと、やりたいこと、欲しいもの。何らかの望みを持っているはず。
街の『門番』は問いかけます。
「そこのシスターさん、この先は“街”だよ。なぜこの門を通りたいんだい?」
この質問にさえ答えられれば、誰でも“街”に入ることができます。
「私は、私のカミサマを探しに来ました。」
「ふむ……そうか。それならどうぞ」
答えられればオープニングは終了。
――さぁ、悪党共の吹き溜まり。“街”へようこそ。
ゲームスタート
まず、ゲームIでやるべきことは大きく3つ。
1、自分の使命を達成する。
2、裏切り者を見つける。
3、VIPから利権を獲得する。
最初に【天運判定】をして行動順を決めたら、『全員動く⇒ランダムで【街のイベント】発生』を繰り返します。
『VIPの利権が全て奪われるまで』繰り返しますので、『サイクル数に制限はありません』。
ただし、街のイベントの中には『VIPの持つ利権が他の勢力に奪われた』なんてのもありますから、グズグズしてると稼ぐ前に終わっちゃいますよー。
【コロシ判定】が面白い!
先にお話しした通り、何かやりたいと思ったら、色々な【判定】を行うのですが。
その中で特に面白いと思った判定は、【コロシ判定】!
物騒な名前の通り、『相手から何かを強奪する』判定です。
例えば、先ほどお隣さんが『JOKER』を手に入れたので、それを奪いたいと思ったとしましょう。
まず攻撃側は、『どの能力でアプローチするか』を、『こっそりと』決めます。能力は《暴力》《智力》《色香》《天運》どれを使ってもOK!
防御側は、『相手がどの能力で攻めてくるか』を、『予想して』対策しましょう。
もし、『ピッタリ予想が当たった』ら、うまく対策されてしまったということで強奪は失敗。
更に【コロシ判定】を仕掛けた人は、お詫びとして『財』を2点、相手に支払わねばなりません。
もし防御側が予測に失敗したら、判定に進みます。
仮に『攻撃側は《暴力》が4だから《暴力》で来ると予想したが、能力値が1しかない《色香》で攻めて来た』となったら。
攻撃側の指定した能力(この場合は《色香》)でお互いダイスを振り合います。
防衛側が勝てば何もなし。攻撃側が勝てば、狙ったもの(今回は『JOKER』)の強奪に成功。
高い能力で仕掛ければ、その後の判定で有利。でも予測されてしまったら逆に『財』を取られてしまう。
低い能力で仕掛けると予測はされ難いけど、その後の判定がきつい。
その辺りのジレンマが大変楽しかったです♪
ピカロの世界は非情
もちろん、判定で手に入れる以外にも『財を4点あげるからさー、PC2の情報教えて?』などと取引を持ち掛けることも出来ます。
しかし! タイトルの通り、これは悪人たちの物語、騙し合いを咎めるものはいません。
GMは、プレイヤーが他のプレイヤーに『嘘の情報を言う』のは止めません。
また、同盟を組むと言って裏切る、後で払うと言っていたのに払わないなど、『口約束を破る』ことも、おとがめなしです。
『自力で獲得した情報だけは信用出来る』
『口約束は絶対に信用するな』
です!
なお手番を使えば、『GMを通して正確な情報の売買』も出来ますので、財が0になって困っている人を狙って交渉を申し込むなど、上手くクールに立ち回りましょうね!
ゲームIIの『裏切り者探し』はJackPot!
ゲームIIでは、ゲームIでVIPが持っていた利権とは別に、PC人数×2点ほどのボーナスが用意され、それを取り合います。
《裏切り者side》
見破られるかどうか⇒正体を見抜けなかったピカロから、2点ずつ利権を奪う。
《ピカロside》
裏切り者を指名しない⇒裏切り者に2点取られる。
裏切り者を間違えて指名した⇒間違えて指名した相手に3点、裏切り者に2点取られる(合計5点失う)。
裏切り者を言い当てた⇒ボーナスを、裏切り者を言い当てたプレイヤーだけで山分け(端数切り上げ)。
つまり。
《ピカロ》は自分だけが裏切り者を当て、皆が自分を誤って指名してくれれば。他のピカロから3点ずつ利権を奪った上で、ボーナス総取り!
《裏切り者》は誰にもバレなければ。全員から2点ずつ利権を奪った上に、ピカロたちにはボーナスなし!
最後にどーんと稼げるジャックポットです!
そして結果発表へ
最終的な利権数の多さ、また他のプレイヤーから称賛されることによって悪名(経験値のようなものです)を得られ。
そのキャラクターは、それだけ“街”で名を知られたピカロになれる。というわけです。
ピカロたちがその先どんな道を歩むのかは、また別のお話になるでしょう――
ちなみに、私は僅差で1位を取れた上、上手くロールプレイがハマって皆から賞賛の悪名をたくさん頂けたこともあり。悪名19点という大金星でした! わーい!
感想
全体的に『判定などはサラッと終わります』が、嫌でもプレイヤー同士で腹の探り合いをさせられる構図になっているので、言い訳をしたり、手を組んだりしようと画策する結果、勝手にロールプレイをせざるを得ない状況になり、面白くなるように出来ています。
戦闘は完全にフレーバーなので、やられ役のNPCはいくらでも出せますし、殺陣など演出は自由自在。どんな極悪人でも出来ます。
特に、ロールプレイが好きな人におススメしたいシステムだと思いました!
※なお、これはTRPGですので、『一緒に遊んでいるプレイヤーが嫌な気分になるプレイ』は厳禁。『ピカロ』とは、物語の主役を張れる悪役たちへの呼称。プライドを持って悪を貫いてくださいね!
インタビュー編へ続く!
いやー、面白かったです。
折角なので、作者のシグレさん(グループSGR)にもお声をかけてみました!
インタビュー編はこちらです。
ピカレスクロマンTRPG インタビュー編
ピカレスクロマンTRPG 公式ページ