何を基準にしてロードバイクを選ぶべきか
少し前の記事でロードバイク本体にかける予算を紹介しました。
ざっくり記事の内容をいいますと、初心者には高級なロードバイクは耐久性や扱いの面で不向きで、初心者は15万円ほどのエントリークラスの丈夫なロードバイクを選ぶべきということになりますが、まだ具体的なことはいっていませんでした。
今回の記事ではいくつかのスペックをもとにして何を基準にしてロードバイクを選ぶべきなのかを具体的に紹介していきます。
フレームはどのように選べばよいですか?
値段や耐久性の話とは少し矛盾してしまうようですが、フレームは見た目で選ぶのが一番だと思います。
フレームの見た目が全てを決定づけるというわけではなく、あくまでも予算や耐久性に少し先立つものである、と考えます。
ロードバイクというのは趣味の乗り物ですから、やはり自分から見てかっこよく乗れているか、かっこいいものに乗れているかというのは外せないポイントになります。
モチベーションが下がってしまってはだめで、楽しさを追求することを忘れてしまえば本末転倒なのです。
フレームの素材の違いを教えてください
ロードバイクのフレーム、といっても主にフレームの素材はカーボン、アルミ、クロモリの三種類があります。
それぞれのフレームの特徴を簡単に説明します。
カーボン・アルミ・クロモリの違い
重量 | 衝撃吸収性 | 耐久性 | |
カーボン | 軽 | ◎ | △ |
アルミ | 中 | △ | ◎ |
クロモリ | 重 | ◯ | ◯ |
カーボンフレーム
カーボンフレームは現在主流の素材で、メリットとしては
他の素材に比べて軽量であり、柔らかいので衝撃吸収性に優れ、疲れにくいということが挙げられます。
ただし、カーボンフレームは製造コストが高いので、他の素材に比べると高額であり、とても十万円台で購入することはできないでしょう。
仮にあったとしても、パーツ類をダウングレードしている場合があり、フレームとうまく釣り合わない恐れがあります。
また、カーボンフレームは耐衝撃性に弱いので、ぶつけたり落車したりするとすぐに破損してしまう恐れがあります。
仮に傷が見当たらなかったとしても内部では劣化が進んでいる可能性があるため検査に出さなければ安全性を保証できません。
アルミフレーム
アルミフレームのメリットは、剛性(力を加えたときの物体の変形のしにくさ)が高く、力を持て余すことなく伝えてくれるので走行効率がよく、耐久性があるので多少雑に扱っても壊れることはない、ということです。
逆に、デメリットとしては、レースで主流なカーボンフレームに比べて重量があり、剛性が高いため衝撃が跳ね返ってきて足に疲労が溜まりやすい、という点です。
しかし、重量や剛性の問題はトレーニングで克服可能であり、重量に関して言えば体を絞ったライダー以外ならダイエットをするほうが先決だと考えますので問題はないと思います。
エントリークラスのロードバイクはほぼ全てアルミ製でしょう。
安いからといってカーボンフレームより劣っているわけではなく、フレームにはそれぞれの良さがあります。
クロモリフレーム
クロモリフレームは一昔前では主流のフレームで、現在ではあまり使われていないフレームになります。
メリットとしては素材伸縮性が高く、比較的柔らかいので長時間乗っていても疲れにくく、かつ耐久性を確保しているという点です。
ただし、難点として錆びやすい、ということが挙げられます。
いまでも、日本国内にはフレームビルダーが多数あり、オーダーでクロモリフレームを作ることができます。
クロモリフレームには根強い人気があります。
旅用自転車であるランドナーにもクロモリが用いられることが多いようです。
フレーム素材の特徴は絶対的な指標ではない?
いま、それぞれのフレームの特徴について紹介しましたが、たとえばレースで主流であるカーボンフレームは他の素材に比べて柔らかい、と説明しましたが、絶対的にそうであるか、といえばそうではありません。
あるフレームメーカーのハイエンド(最上級)ロードバイクでは、レース向けを想定して作られており、有名自転車情報サイトのインプレ(自転車の世界ではよく感想のことをインプレ、といいます。)では、カーボンバイクでありながらアルミバイクのような硬さ、という表現がされていました。
フレームの特徴は、素材からある程度の用途の見通しは立ちますが、それが全てではなく、むしろ個々のバイクの問題ですから、そこまで細かく決めてロードバイクを買おうという方は気になるモデルを試乗してみるのがよいでしょう。
素材だけではなく、ジオメトリ(フレームの寸法)、素材の配置方法、テクノロジーなどによって乗り心地は変化します。
ものによってはサイズによって乗り心地が変化するものもあるようです。
有名メーカーのロードバイクではサイズごとにジオメトリを見直していることが多く、サイズによって乗り心地が変化することがないようにしています。
事実、幾つかのロードバイクの公式サイトの紹介などでは、サイズごとで違いがでないように調整してある、と書かれているものがあります。
初心者にはアルミがおすすめ
前の記事でも書いているように、初心者にはアルミがおすすめです。
おすすめする最大の理由は、やはり扱いやすいということにあります。
カーボンでは落車によって使用不可能になるリスクは高いですし、比較的高額なものが多く、壊したくない、と思うものです。
また、クロモリには錆びやすい、というリスクが有り、寿命はアルミに比べたら短いのではないか、とも考えます。
その点、アルミは並大抵のことでは壊れなくて、錆びる心配も必要ないので、扱いやすいです。
アルミは乗り心地が悪く、剛性の高さゆえ足がつかれる、という人もいるようですが、むしろそれは訓練になるのではないでしょうか。
レースに出るのならもちろん、そうでなくて、ロングライドに活用する、という人であっても体力をつけることは自転車スポーツを楽しむ上で必要なものです。
あとは、比較的安価なことが多く、財布にも優しい、という点もおすすめできる点です。
そもそも、エントリークラスのロードバイクはアルミであることが多く、予算が少ない、という人は必然的にアルミを選ぶことになるでしょう。
コンポーネントを選ぶ
自転車の性能を語る上で外せないのがコンポーネントです。
スポーツバイクの世界では、自転車を構成している部品をひとまとまりにして扱い、これをコンポーネントと呼びます。
通常、ブレーキ、シフトレバー(ブレーキレバーと兼用であり、名称はコンポーネントのメーカーによる。シマノではSTIレバー、Campagnolo ではエルゴパワー、SRAMではダブルタップレバーという。)、クランクセット(ペダルの周辺のチェーンを回転させている部分のことをまとめてこのようにいう。)、スプロケット(後輪ホイールに取り付けられた歯車)、ディレーラー(変速機、前後含む)をひとまとめにしてコンポーネントといいます。
注:コンポーネントを構成する部品について、一部厳密には異なる部分がありますが、わかりやすさを重視するための配慮です。
シフトレバーのところに書きましたが、コンポーネントは現在、ほぼすべてシマノ、Campagnolo、SRAMの三社がシェアを占めており、中でもシマノはコストの面や動作の確実性などにより残りの二社とは比べ物にならないくらいの高いシェアを占めています。
今回はシマノのコンポーネントについて説明します。
シマノ以外のコンポーネントが悪い、というわけではないのですが、補修部品の手に入りやすさ、取扱のしやすさ、コスト、動作性などから初心者はシマノのコンポーネントを選ぶことをおすすめします。
シマノのコンポーネントはいわば、非の打ち所のない優等生と形容することができ、はっきりいって誰にでも合う製品だと思います。
今回の記事ではグレード別の詳しい説明はしませんが、シマノのロードバイク用コンポーネントは上から順に DURA-ACE, Ultegra, 105, Tiagra, SORA, Claris, Tourney の7グレードが用意されています。
完成車に搭載されるコンポーネントですが、DURA-ACE はおおむね60万円以上のクラスに、Ultegra はおおむね30万円以上、105 は10万円後半台から30万円台まで、Tiagra は10万円前半台くらい、SORA, Claris は10万円以下、Tourney は5万円くらい が目安になります。
簡単な違いを説明します。
コンポーネントの最もわかりやすい違いとは変速の段数になります。
2016年現行モデルでの話になりますが、105以上は11速、Tiagra は10速、SORA は9速、Claris は8速、Tourney は7速(いずれもスプロケット側だけの段数)になります。
さて、いきなりですが、初心者におすすめなのは105 です。
妥協するとすれば、Tiagra, SORA になりますが、どうしても予算が用意できない場合を除いて105 の搭載されたロードバイクがよいです。
以下、理由を挙げていきます。
ホイールの互換性
ホイールをアップグレードすることを考えると、ホイールにはスプロケットの対応段数が決まっており、多くのホイールが9,10,11速のみ対応となっていることから、少なくともSORA 以上を選択することが必須となります。
やろうと思えば8速のスプロケットでも使えなくはないかもしれませんが、私としては前例を聞いたことがなく、ひょっとしたらできないのかもしれません。
そうなるとコンポーネントを取り替えなくてはホイールをアップグレードすることができなくて、大変損であります。
また、スプロケットはホイールに装着されているのでホイールを貸し借りする際には変速段数をあわせなければ使うことができません。
105 の搭載されたロードバイクは他のコンポーネントより比較的多くシェアを集めていると思われますので仲間と走ったりする際にホイールの貸し借りがしにくい、ということもあるといえます。
ブレーキの効き目
105 以上ではブレーキの構造が下位のグレードと異なり、より強い制動力を得られるような構造になっています。
私の体験としては、Tiagra のブレーキと105 のブレーキでは効き目に雲泥の差があり、Tiagra のブレーキでは止まれない、という感想をいだきました。
とてもですが、105より下位のグレードのブレーキで坂の下りなどをこなしたくない、というのが私の感想です。
仮に105 を搭載していない完成車を買うにしろ、ブレーキだけはせめて105 のグレードに交換することを強くおすすめします。
ブレーキについて予算が許すのであればそれ以上のグレードを用意するに越したことはありません。
コンポーネントの差に気づくことができるのか
105 より上のコンポーネントは必要なのか?と思われるかもしれませんが、105 はロードバイクを始めるにあたり、必要かつ十分な性能、耐久性を持っており、コストパフォーマンスが良いと考えられますので、ロードバイクを始めるにあたり105 より上のコンポーネントは気にする必要はないと考えます。
そもそも、105 より上のグレードのものと乗っていて区別がつかない、という人が大半で、区別がつく、といっている人でも、変速速度が違うといった、ある一つの機能のみに言及している場合がほとんどで、「よくわかっていない人だなぁ」という印象を受けます。
そもそもその変速速度も、体感レベルでの話であり、一種の偽薬効果にすぎないのでは、とも思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
購入するロードバイクを選ぶにあたり、考えておく必要のあるさまざまな要素を紹介しましたが、私としては選ぶ上で直感が大切だなぁと思いました。
剛性が高い、ロングライドに優れている、レースに最適、などフレームを特徴づける言葉がありますが、パッとみて、「これだ!」と思えるフレームがその人にとって一番な選択なのではないでしょうか。
ロードバイクはスポーツですから数値などを重視するよりも自分の感覚を大切にするほうがより楽しめるのではないかと考えます。
この記事をご覧になっている方が「これだ!」と思えるフレームに出会えることを願ってやみません。